深夜に同名のアニメが放送されています。なにかの感動を与えてくれそうで、今のところはまったくダメ。なにかをやりそうで、現代風俗のオタッキーな部分をなぞるだけという、クソみたいなアニメです。だけど、自分の嗅覚はまちがいないはず。というわけで、思い切って原作を読んでみました。
「NHKにようこそ」滝本竜彦著 角川文庫
大傑作じゃないか。アニメは原作の上っ面(おたく的なところ)をなぞるだけで、肝心の精神をまったく生かしきれていません。ていうか、わかってない。
あらすじは、こうです。ひきこもりの俺は、ドラッグをやることで、自分がひきこもりなのは「NHK(日本ひきこもり協会)」の陰謀という悟りを一時期だけ得る。そんな俺に、新興宗教をやっているらしい女の子が近づいてきた。彼女は俺をひきこもりから救ってくれるという。彼女がやりはじめたことは、適当に集めた心理学や自己啓発本をひたすら俺に読み聞かせるというものだった。俺は、じょじょに彼女の正体に気づいていく。彼女は、新興宗教の中ですら居場所がなく、自分よりダメな人間を見つけ、それを救うことでしか自分の居場所ももてない元虐待児だったのだ。俺は、彼女を救うために、NHKを使うことを思いつく。
ひきこもりのノンフィクションはいくつか読んだことがありますが、その心理をここまで的確に表現した書物は他にありません。引用します。
つまり俺たちは、寂しいからひきこもってるんだ。これ以上、寂しい思いをしたくはないから、ひきこもってるんだ。 俺は誰よりも欲張りなんだ。中途半端な幸せは欲しくないんだ。ほどほどの温もりなんて、いらないんだ。いつまでも続く幸福が欲しいんだ。しかし、それは無理だ! なぜかは知らないが、この世の中、かならずどこかで邪魔が入る。大切なモノは、速攻で壊れる。(中略)だから最初から、なんにもいらない方がいい。
ここまでが266ページあたりからの引用。主人公はひきこもりです。でも、世の中には、世の中がブラックボックス化しているからこそ、自分がなぜ不幸なのかもわからず、自分をもてあましてしまう人間はいくらでもいるんです。ひきこもりも含めて、すべてのさびしい人間を救う唯一の手立ては、もちろん、あやしげな自己啓発ではなく……。
以下、301ページ以降から引用。
どうして悲しむ必要がある? もしも君が、いつでも苦しくて寂しくてやりきれないとしたら、それは不条理だ。おかしいじゃないか。そんな話は変じゃないか。 だから、どこかに元凶が存在しているんだ。(2ページほど、とばして)奴らが俺たちを苦しめている。悪いのは全部NHKだ。もしもこの先、君の周りに悪いことが起きたとしても、それはぜんぶNHKのせいなんだ。全部NHKが悪いんだ!……もっともNHKという名前は、あくまで便宜的なものだ。名前なんて、どうでもいい。NHKって名前が気に入らなかったら、好きに呼べばいい。なんだったらサタンでもいいぞ。悪い神様でもいいぞ。おんなじことだ。(引用終わり)。
熱いじゃないですか。さけびになっているじゃないですか。要するに、どんづまりの人間は、仮想敵をつくり、それに責任転嫁するしか救いの道はないというわけです。今なら、すべては北チョーセン(これは仮想どころではなくなってきていますが)のせいとか、ネット右翼はサヨクのせいとか、サヨクは帝国主義のせいとか、なんなら、フリーメーソンでもユダヤ人でも、ニャントロ星人でもいいぞ(笑)
NHKの意味というか深さがこれでわかったでしょう。だから、この作品は傑作として、これからも残り続ける。読み間違えれば、アニメみたいに、ただのオタッキー扱いされてしまいますが、この本はそんな単純なものとは断じて違います。
アニメの「NHKにようこそ」をつくっているのは、GONZOですか。これについての悪口は、いずれ、また。
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