トモネン (大庭賢哉著 宙出版)
コミックです。
大庭賢哉。この名前は、児童書にかかわっている方ならご存知ですよね。主に軽い児童エンタテイメントに挿絵をつけることが多い方。軽いエンタテイメントには萌えか少女マンガ(わたしはそのどちらも嫌い)さえつけておけばいいという風潮が広まっている中、独特の存在感を保ちつづけている方です。個人的に、いつかいっしょに仕事したいと憧れている方でもあります。
まさか同人誌でマンガを発表しているとは思いもしませんでした。
読んでみると、絵は、ジブリアニメ原画風のものが大半。実にうまい。
内容は、児童書そのもの。わたしは、自分自身がマンガっぽい作風でありながら、おもしろい児童書=マンガノリだとは思っていません。むしろ、マンガノリでないのにおもしろい作品が絶滅しないかと危惧しているくらいです。そちらも元気にならなきゃ。
児童書には、エブリデイマジックという、他のジャンルでは見られない手法でおもしろさを醸し出すタイプのものがあります。生活感がありすぎるライトファンタジーとでもいえばいいのでしょうか。大庭氏のこの作品集はその系譜を引いています。マンガなのにマンガノリじゃない。ですから、この本は、コミックというより児童書として語ったほうがいいでしょう。
ちょっとだけ内容紹介。「トモネン」は中学年向き。魔女っ子ものにありがちなドジの系譜を引いていながら、妙な生活感があります。たとえば、トモネンは、魔女修行中なんですが、一般の子に詰め寄られます。
「魔法って、資格とかとれるの?」「修行終わったら、就職はどうするの?」
トモネンは泣いてしまいます。で、オチは、師匠のこの一言。
「絵画教室のようなものでは。一年コースだし」
コケますわ。「トモネン」シリーズは、このノリね。で油断していると、本自体は作品集なので、どんどん読者対象年齢があがっていきます。いわゆる高学年以上向きになっていきます。
たとえば「Go Girl」は、哲学的思考に目覚めていく少女の話。
少女は、手紙を書くとは、自分ではない誰かとつながることだという思考を得ます。それは他者の発見。少女は海にむかって手紙を投げます。すると、それをおかあさんに見つけられるんですね。おかあさんは、少女に答えます。
「はじめまして。私も自己紹介するわ。私は……」
少女はそれを聞いて泣きだします。「おかあさんは私とは別の人間だったんだ。当たり前だけど、それを知ったからには、もう後戻りはできない」って。
どうですか? これをマンガでやっちゃうんですよ。もう下手くそな児童文学作家は真っ青ではありませんか。
この作家は、挿絵経験が生きているからでしょうか、子どもの心の襞をとらえるのが抜群にうまいです。マンガでここまでできるなんて驚きです。児童書らしいマンガ。ジブリよりジブリのいいところを継いでいるマンガ。
降参。
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