どこまでがデマか、学力低下
http://www.weblio.jp/content/%E5%AD%A6%E5%8A%9B%E4%BD%8E%E4%B8%8B
↑は、学力低下についてまとめてあるサイトです。だけど、どうにも納得できません。
まだ学力低下に関する本をいろいろ当たっている段階だけど、とりあえずわかったのは、論争に火がついたのは、1999年からだということ。ゆとり教育が導入されたのは、2002年ですから、学力低下の掛け声は、ゆとり教育阻止(よけいに学力低下に拍車がかかることへの懸念)から、そもそも上がったものだということ。
だから、現在の子どもの学力低下はゆとり教育のせいだとする最近の論調は、時系列的に、どう考えてもおかしいっす。
99年には、「分数ができない大学生」という衝撃の本が出版されています。でも、それは「一般に思われているほど、大学生の算数・数学力の惨憺たる低さを調査データで示したものではない」(「学力低下論争」 市川伸一著 ちくま新書 54ページ)そうです。
なんじゃこりゃ、です。
学力低下が間違いないとされた根拠は、2004年に公開された「国際学習到達度調査」で、日本の15歳の子どもの読解力が2000年の世界第八位から十四位まで下降したことからきています。
では、あなたは、一口に読解力といいますが、どんな読解力が落ちたのか、分析してみたことがありますか? どうも、調べてみると、読解力全般が落ちたようではないのです。
おすすめは、「国語教科書の思想」 石原千秋著 ちくま新書
日本人が他国民とくらべて、とりこぼした問題とはなにか。それは自由記述問題です。
53ページから一例をとりだしてみましょう。以下、引用。
「贈り物」の最後の文が、このような文で終わるのは適切だと思いますか。最後の文が物語の内容とどのように関連しているかを示して、あなたの答えを説明しなさい。
物語を批評的に読みなさいという趣旨の設問である。(中略)当然、日本の一五歳はこの設問ができない。無答率はOECD平均約二一パーセントに対して、約四一パーセントでダントツの一位。
石原千秋は、はっきりその理由を語っています。
日本の国語教育は与えられた文章を「ありがたいもの」として、徹底的に受身の立場に立って「読解」することだけが行われているからである。与えられた文章に能動的に関わって批評などしたら、「お説教」が待っている。それが日本の国語教育の現実だ。
わたしが本ページでやってるように、たとえ売れ線であろうと評価が高かろうと教科書に載っていようと課題図書であろうと(その時点で「ありがたい」というお墨付きがついていようと)、気に食わない作品には、自分の言葉で論理的に「気に食わない」理由を述べると、説教されてしまうということですな。これは、子どもだけではなくて、児童文学に携わる大半の人間もそうでしょう。「あなたの答え」は後ろめたい罪ですか?
でも、国際基準では、「文章や図や表から情報を読み解く力」「文章を批評的に読む力」「これらを記述する力」が求められているんです。今の子は、ますます、それから遠ざけられていることがはっきりしたわけ。
こんなことすら、まともに言ってくれる人間はすくないというわけだ。すくなくともマスコミは。
当然、これへの処方箋は、ゆとり教育を否定し詰め込み教育を復活させることではありません。でも、読解力低下は、「ゆとり教育批判」のために使われているので、そんな論議が起きることは、まずないでしょう。かといって、ゆとり教育を弁護するつもりもありませんが(学習内容を一律三割削減はあまりにひどい)。言いたいのは、もっとうわべのスローガンではなく、内実を見ろということです。スローガンだけの教育改革なんてまさしく言語道断。
教育にまつわるトピックを追っていくと、あまりにデマが大手を振っていることに唖然とさせられます。
でも、もっとひどいのは、そのデマを信じきっている人間のほうがあまりに多いこと。「文章を批評的に読む力」が根本的に弱いんだもんね。しかたがないか。前にも書いたように、大手塾の大先生が「小学校では円周率3で教えている」などと平気で言っているご時世だもんね。
あ、それから、もうひとつ。これは個人的な考えだけど、大学生の学力低下は、ひとえに少子化に由来するものだと思っています。子ども全体の数がへっているのに、大学数がふえ、一流校も定員数をへらさないという処置をとれば、昔なら大学に入れなかったような人間も入ってくるに決まっています。でも経営上、どうしようもないんでしょう?
しかも、合格させるためには、未履修科目をつくるという姑息な手段も使われてるんだから、学生の総合力が落ちるのは当たり前。未履修科目をつくったのは、進学率を上げて高校経営を安定させるためでしょう?
なんだ。結局は、経済上の競争主義が間接的に子どもにおりてきただけじゃないか。
それでも、学力低下を「現代っ子」バッシングのためだけに使い続けますか? そういう無責任な論調を、批評もせず、「ありがたいもの」として受け入れますか?
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